プロムドレスラグビー (Prom Dress Rugby)

プロムドレスラグビーほど衣類にとって残酷なものはない。

プロム(Prom)というのはプロムナード(Promenade:舞踏会)の略で、米国などの高校で学年最後に開かれるフォーマルなダンスパーティのことである。そのパーティに着飾って出席するために、女子たちが懸命に選ぶのがプロムドレス(Prom Dress)だ。

英米では、大学生を中心に、女子学生たち(一部には男子も含む)が中古のプロムドレスを着て、本格的なラグビーの試合をするという恒例行事がある。様々な大学で行われているもので、主には基金の募金活動の一環イベントとして開催される。

ラグビーは選手同士が激しくぶつかり合う球技だが、それに華麗で優雅なドレスを着て参加しようというのだから、ドレスにとっては過酷以外の何物でもない。

選手たちはそれなりに訓練された人たちなので、女性といえども遊びではなく、熾烈な試合が繰り広げられる。

画像:国内外のサイトより引用


↓卒業を控えた女子高校生たちは、様々な期待に胸を膨らませながら、プロムパーティに着ていくドレスをあれこれ試着して選ぶ。ドレスたちも、選んでくれた女の子を精一杯輝かせてあげようと頑張ったに違いない。

それなのに、その先でまさかラグビーの衣装として使われることになろうとは・・・。


ドレスは、基本的に中古のものが使われる。自分たちで持ち寄った物のほか、使われていないドレスも寄付を募って集められる。試合は事前に告知される。

当日、集められたドレスたちはフィールド脇に山積みにされ、選手たちは思い思いに好みのドレスを選び始める。

ドレスの種類は多岐にわたる。裾を引き摺るようなロングドレスもあれば、闊達な印象のタイト系ドレスもある。ボリュームも色々で、チャイナドレスも混じっていることがある。

いずれにせよ、選ばれたドレスにとって、今日は最期の日になる。ラグビーの試合は前半後半合わせて80分であるが、試合終了を待たずにどろどろズタズタにされて、形すら残らないドレスが続出する。

いや、試合開始を待たずとも、ドレスにとっての虐待は始まっている。

屈強な女性の身体をきちんと包むドレスは少なく、ジッパーを上げないまま着たり、背中を切り裂いたりして身に着けたりする。そのままだとドレスがずり落ちてしまうので、ウエストをガムテープでぐるぐる巻きにする。

裾が長いドレスは、脇を切り裂いて走りやすくしたりもする。あるいは、スカートの裾を切り取って短くする場合もある。切り取った生地をウエストを縛るベルトに使うこともある。中古のドレスで、しかも試合で消費してしまうものという意識があるのか、女子学生たちは何のためらいもなく、みな談笑しながら淡々と準備を進めていく。

幸運にも、選ばれずに残されたドレスは、フィールド脇に放置されるか、フェンスに掛けられて試合を見守ることになる。試合の中で、他のドレスたちが虐待を受けて、哀れな姿となり果てていく様子を目の当たりにしながら。

↓屈強な体躯の女性たちに、ノーマルサイズのドレスが合うはずもなく、背中のジッパーは閉じないままガムテープで留めたりする。

↓ロングドレスは走るのに邪魔なので、大きく切り裂かれる。裾を切り詰められてしまうドレスもある。


女性たちは、みな大学のラグビークラブのメンバーで。本格的にラグビーをやっている選手だ。そんな彼女たちに着用されて試合に望めば、か弱いドレスたちは無事では済まないだろう。

激しいタックルによるぶつかり合い、倒れて引き摺られ、鷲づかみにされて引っ張られたりすると、それに耐える強度はドレスにはない。

↓つるつるサテンドレスも容赦なくタックルされる。グランドに引き倒されたら土まみれになるが、周囲からはナイスタックルの掛け声が飛ぶ。

↓パーティ会場なら魅力的なドレスも、この場では裾がどうなろうがお構いなしだ。

↓本来なら心地よい風を受けて揺れるはずのドレスだが、全力疾走のなかで揺れることは想定されていなかっただろう。


つるつる生地のドレスもさらさら生地のドレスも、あっという間にどろどろになり、裂け目ができ、ズタズタのぼろぼろにされてしまう。惨めに垂れ下がった生地をくくり上げるものもいれば、邪魔な生地を取り去ってしまう者もいる。フィールドには、剥ぎ取られた生地が散らばって放置されていたりする。

試合が終わる頃には、ドレスがすっかり毟り取られてしまう者もいる。

ドレスってこんなことに使われるために生まれてきたのだろうか?

↓我が家のクローゼットにも似たようなサテンドレスがあるが、皮脂ひとつ付けないように常に丁寧に扱っているというのに、ここでは試合が終わるころには、ドレスの形を保っているかどうか怪しいと思われるほど過酷だ。

↓着ているのはラグビーユニフォームではない。強く引っ張られると耐えられない。


試合が終わるとドレスたちは用済みだ。クリーニングするなどという発想はなく、使い捨てにされる。そもそも無事に形を保っているドレスを探すほうが難しい。

↓ドレスが泥だらけになるのは勲章だといわんばかりに、笑顔で写真撮影する。どろだらけでも形が残っているだけマシなのだろうか。しかし、もうドレスとして使うことはできない。試合の後、ドレスはゴミ袋に押し込まれ、女性たちは打ち上げパーティへ行くのみだ。

↓大きな泥汚れはタックルされてスライディングしたのだろうか。裾はずいぶんと引き摺られたと見え、泥水がしみ込んでいる。ドレスと言えばわずかな食べこぼしも大騒ぎするはずだが、ここでは汚れれば汚れるほど讃えられる。


男性が女性のプロムドレスを着て試合をするケースもある。男性に雑に着られているだけでも哀れなのに、ラグビーの試合で虐待されて、果てていく運命とは・・・。

また、プロムドレス以外に、ウエディングドレスを使う試合も存在している。



動画で楽しむドレスの哀れ

満面の笑顔で楽しそうにドレスを選ぶ女性たち。無造作に地面に投げ出された瞬間に、ドレスたちは何かがおかしいと感じ始めたであろうか。サイズ違いもお構いなし。背中のジッパーなんてきちんと留められることもなく、イベントは始まる。ドレスへの敬意は微塵も感じられない。


計算しつくされてデザインされたシルエットのドレスも、ラグビーにはタイト過ぎるとざくざく切り裂かれてしまう。長すぎる丈を切ってしまう例もある。


どうしてこんなイベントに捕まってしまったのか、運の悪いチャイナドレスも見える。か弱い生地と造りのチャイナドレスは、激しい動きにひとたまりもない。他のドレスも同様である。しだいに形をなくしていく哀れなドレスたちに涙が止まらない。


激しい動きに耐え切れず、次第にぼろぼろにされ、やがてドレスとしての形状をも保持できなくなってしまう。ノーサイドの笛を待つこともなく、ドレスはドレスでなくなり、ただの泥

まみれた布切れとなるのだ。