古い映像に写る女性たち

古い写真や動画に女性が写っていると、その女性たちが着ている衣類のことを想う。

それが何十年も前のものだと、彼女たちに着られている衣類は、もうこの世には存在していないのだろうなと思ってしまい、複雑な気持ちになる。

自分のクラス写真や卒業アルバムを見て、感慨にふけることがある。写真に写っている子のうち、何人が今も制服を保管しているのだろうか。


アルバムの女子学生たち

昔の女学生の制服は、きっと大切に着られていたと思う。卒業しても、妹や後輩へ修繕されながら、代々受け継がれていったことだろう。いよいよ擦り切れて使えなくなったら、ハギレは他の衣類の当て布にされ、残りは雑巾に縫い上げられたであろう。今とは違って、とことん果てるまで使い込まれていったものと信じる。写真の制服たちはどこまで使い込まれただろうか。そのうちいくつかは生き残っていないだろうか。

 

それほど大昔のものでなくても、たとえば20~30年ぐらい前のもの(1980~2000年)であっても、現存する制服はほとんどないだろう。そう考えると、こうした写真を見るとき、写っている制服たちがいっそう愛おしく感じてしまう。生徒にどのように扱われ、どのような思い出を残したのだろうか。どんな最期を遂げたのだろうか。

 

ネット上には、TVで活躍する女優やアイドルたちの卒業アルバムが載っていることがある。制服姿の子たちを見るにつけ、この制服は今も保存されているのだろうかと思ってしまう。もし「今も保存しています」と語る人がいたら、私はその人のファンになるだろう。

 

いま私の手元には、使用年代がはっきり分かっている制服がいくつかあって、古いものは1960~70年ごろの学校制服や職業制服がある。いずれも50~60年ものあいだ生き抜いてきたのだ。また、30~40年ぐらい前に使われていたものならば、かなりの数が確認できる。和服ならばアンティーク物もあるので、100年近い歴史のものもある。衣類たちはみな逞(たくま)しい。



セーラー服全盛の時代に、いち早くスーツ型の制服を導入した学校は、当時は最先端のファッションを取り入れたと自負したであろう。しかし、それも後には、ダサい制服の代名詞のように揶揄されるデザインとなったりする。制服に罪はないのに。

一方で、セーラー服をかたくなに守ってきた学校は、今もその輝きを失わないデザインに誇りを持ってほしい。何十年前の写真であろうと、セーラー服姿の女学生は新鮮で、眺めていてドキドキするものがある。

画像:秋田高等女学校修学旅行記念(ヤフオクmeets4998


歴代制服

文化祭やオープンスクール、式典などに、過去に採用した歴代の制服を展示する学校は意外と多い。長い歴史を誇るかのように、在校生や保護者たちに公開するのである。サイト上でも学校公式ページにそんな様子が掲載されている。札幌大谷でも卒業式に展示したことがあるようだが、その記事の中に「制服が久しぶりに明るいところに出て、照れているように見えました」との一文があった。制服の気持ちを代弁してくれているようで心地よい。

近年の制服は学校側が保管している場合が多いが、「同窓会のご協力もいただき…」とあるのは、同窓会を通じて、卒業生が保管していた古い制服を拝借したのだろう。長きにわたって保存されてきた制服は幸せ者である。

 

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出典:札幌大谷中学校・同高等学校公式

「平成22年3月1日、本校の卒業式はセーラー服最後の卒業式でした。一つの歴史が終わったとも言えます。

同窓会の協力もいただき、歴代の制服を飾ることができました。その中にはスカートに1本の白線が入っているものや、戦時中と思える、もんぺにずきんのようなものまでありました。古びた印象の制服ですが、その当時を振り返るならとてもハイカラな(ファッションセンスの先端をかけていたのではないか)印象を持ちました。

卒業式後、卒業生と保護者や祖母らが古い制服を見ながら、色々と話をしていました。制服を飾ってよかったなあと思っていました。

制服が久しぶりに明るいところにでて、照れているように見えました。」

 

1)開校 明治39年~大正10年

2)大正11年~大正12年

3)大正13年~昭和2年

4)昭和2年~昭和8年夏服

5)昭和2年~昭和8年冬服

6)昭和9年~昭和16年夏服

7)昭和9年~昭和16年冬服

8)昭和20年頃

9)昭和18年~昭和23年

10)昭和23年~昭和45年夏服


歴代制服の写真を、公式サイトに掲載している学校も少なくない。長い伝統を制服の変遷で象徴しようとしているのだ。モデルチェンジしてしまった旧制服も、このような形で貢献するのは本望ではないか。

文化祭や校内発表会などで、生徒が「自主的に」歴代制服を展示することもある。市邨学園の場合は制服店の協力を得たようだ。サンプル資料として所有しているのであろうが、仕事とはいえ、きちんと保存している制服店には頭が下がる。

 

一方で、瀧野川や梅花のように、制服を頻繁に変更している学校もある。

大学の附属になったり、男女共学になったりして、校名や体制が変わった学校の場合は、そのタイミングで制服のモデルチェンジも行われる。

そうでない場合は、制服を斬新でおしゃれなものにして女子生徒を集めようという算段が外れ、そのたびごとにモデルチェンジする例もある(前掲の学校がそうだというわけではない)。学校も経営だから仕方がないことなのだが、とばっちりを受けるのは制服である。モデルチェンジしたら、旧制服は後輩におさがりされなくなる。制服にとって命取りとも言える事態なのだ。


制服の変遷

制服のモデルチェンジに関しては、当サイト別ページに記載しているが、ここでは制服の変遷ということに絡んで書いてみたい。制服がモデルチェンジするということは、制服にとって一大事だ。もう後輩におさがりとして受け継がれる機会がなくなってしまうのだから、自身の存亡にも関わるのだ。それは仕方のないことと百歩譲ったとして、そのタイミングごとに、旧制服となってしまう寂しさを感じていた人がわずかでもいてくれたらと願う。たとえば、下記の記事のように、制服のことに思いをはせてくれたなら、いくらかでも救われる思いがする。

 

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出典:愛媛県立大洲高等学校公式

「3月1日に卒業生が母校を巣立っていきましたが、実は女子生徒の制服も一緒に大洲高校を卒業しました。卒業した制服は、昭和48年に採用されてから42年間、大洲高校とともに歩んできました。生徒の中には「お母さんの卒業アルバムも同じ制服で写っていた」と言う者も多くいます。新しい女子制服は平成25年度入学生徒から学年進行で採用され、来年度は全学年が新しい制服になります!

卒業する制服のモデルになってくれたのは、今日大学の合格報告に来校してくれた中谷春乃さんです。「制服が変わるときは、後輩の可愛らしい制服をうらやましく思いましたが、最後には母も着ていたこの歴史ある制服を着て、3年間を過ごすことができてよかったと思っています。歴史と伝統のあるこの制服がなくなってしまうのは寂しい気もしますが、最後の卒業生となれたことを、嬉しく、誇らしく思います」」

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2015年の記事であるが、写真の制服は絶対にお下がりされてはいないのだ。つまり同校で制服として再利用される道は閉ざされているのである。この制服の行方が気になって仕方がない。

ちなみに、新制服は今風の「ブレザーとチェックのスカート」になっているようだ。



古いドラマや映画の衣装

古いTVドラマや映画に出てくる学校制服や職業制服、ワンピースやドレスや和服など、これらはおそらくワンクール撮影後、用済みとなっているはずだ。特徴的なものはどこかに展示されたりしたかもしれないが、一般的な制服や私服は今となってはすでにこの世にはないだろう。どのような最期を遂げたのか、とても気になる。出演者本人か、スタッフ、衣装協力・提供社などが大切に保管していてくれないだろうか?

古い映画を観ると、気のせいかもしれないが、昔のほうが衣類の使い方や映し方が上手いような気がする。チラリズムの極意を押さえているというか、少なくとも私はそそられるのだが、皆さまは如何だろうか。

また、昔の学園ものドラマでは女子高生と言えばセーラー服だった。いま観てもセーラー服姿はそそるものがあり、セーラー服は永遠だと実感させられる。もちろん、スーツ型制服も今から見ればレトロな雰囲気を醸し出しており、それなりに萌えるものがある。


↓現代のバスガイド制服はおしゃれだが、紺色のトラディショナルな制服もアピール度は抜群だ。

↓こんなウエディングドレスなんか、もっと雑に扱われたかもしれないと思うと胸が痛む。



↓ワンピースが、タンスから次々と取り出され、投げ出されていく。

↓夏冬セーラー服、他校のスーツ制服、剣道着など爽やかな青春の一コマを感じる。



↓端折られたセーラー服の袖裏に赤い裏地が見えて萌える。学園乱闘ものの定番だが、男子が主役である。

↓映画だが、タイトルに「セーラー服」と入れているところがあざといが、分かりやすい(笑)。



航空会社CA(スチュワーデス)が主役のドラマは数多く制作されているが、ほとんどが実在の航空会社を舞台にしていて、全面協力を得ている。CA制服も会社から貸与されている。

そういえば、全日空(ANA)の制服が撮影後に行方不明になった事件があったなと思い出し、調べてみたら、CM撮影だった→ブログ「Fly to the dream」

↓日本航空6代目CA制服姿が堪能できるドラマシリーズ。ミニスカのワンピースが特徴的だった。

↓架空の航空会社が設定されたドラマシリーズ。ふつうCAものは航空会社の協力があり、実物の制服が使用されるが、このドラマは例外である。



1965~1974年ごろ、TVでは青春学園ドラマの全盛期だった。『青春とはなんだ』『これが青春だ』『でっかい青春』『進め!青春』『飛び出せ!青春』『われら青春!』など、映像は集められなかったが、タイトルを聞くと懐かしいと思われる方もいらっしゃるだろう。これらのドラマの女子生徒はセーラー服を着ていることが多いが、『飛び出せ!青春』の太陽学園高校の制服はボレロ型で、当時としては新鮮な雰囲気を醸し出していたようだ。 

再放送で観たときに記憶に残っているシーンがある。放課後に運動部の練習を終えた女子生徒が、ロッカーで着替えずに制服一式を抱えたまま寮へ走って帰ろうとするのだが、男子生徒とぶつかってしまい、抱えていた制服が地面に投げ出されるのだ。上着やスカートやブラウスなどがぶちまけられるのを見て、一瞬のシーンに興奮したものである。



アイドル歌手の衣装

子供の頃から、女性アイドル歌手たちの衣装は気になっていた。テレビで、顔のアップやバストショット(胸から上の影像)ばかりを映すカメラには、「衣装をもっと見せろ」と舌打ちをしていた。

小学生のころ、マセた友達が、誰それはミニスカートで太ももが見えるとか、パンツが見えたとか言って喜んでいたが、私はむしろ、膝丈ぐらいでゆらゆら揺れるシルエットに惹かれていて、女性の身体云々(うんぬん)よりも衣装に関心を持っていた。その生地に光沢があれば、いっそう懸命に見入っていたものだ。

 

アイドルたちの衣装は、本人宅やその関係者宅などに保存されている可能性が比較的高いだろう。ファンサービスでファンにプレゼントされたり、チャリティで売られることもあるが、ファンへ受け継がれるので、大切にされることが多いと思う。中には自分で着てみたり、一緒に寝たりする人もあろうが、ひどい虐待を受けることは稀だと思われる。

○○展と称して、アイドルの衣装が展示されることもあるし、大御所歌手で資料館のようなものができると、そこに一括して保存されたりする。

 

ただ、汎用品のセーラー服などが衣装として使われている場合は、いわゆるアイドル衣装としては扱われず、大切に保管されているとは考えにくい。アイドルが着たという付加価値が認められるのであれば別だが。

 

知人から、最近はアイドル衣装を専門に扱う販売店もあると聞いたことがあるが、訪れた方はいらっしゃるだろうか。もし購入されるのなら、エッチなことには使わないでほしい。

私は、昔、某歌手がPV(プロモーションビデオ)で着たという和服を、チャリティで入手したことがある。いまも大切に取ってはあるが、最近はその歌手もごくごくたまにテレビで見るぐらいで、私の興味もほとんどなくなってしまった。いま、サイン付きで和服をオークションに出しても、大した金額は付かないのではないか。きれいで上品な着物だが、活用されることもなく仕舞いっぱなしで、思えば可哀想なものである。

 

最近は動画サイトで、さまざまな昔の影像を見ることができるが、これらの衣装たちが今どうなっているのか、ひとつひとつ確認してみたいものである。

ときどき、今ではオバサンになった元アイドルがTVに登場し、当時着ていた衣装を披露してくれることがあるが、「今まで大切に保存していてくれたんだな」と、ほっこりした気分になる。それをふざけた司会者が捲りあげて茶化したり、いやらしい話題へ持って行ったりするのは腹立たしい。