日本のほとんどの幼稚園・小学校・中学校・高等学校では制服を指定しているが、そのうち私立校では、ほぼ100%が独自の制服を採用している。制服デザインで学校のカラーを出したいという思いと、女子が着てみたいと憧れるような制服を採用することで、少子化の中で生徒を確保しようという思いが交錯して見える。
公立校においては、経済的な側面や、生徒たちの制服自由化運動などの流れに応じる形で、制服が廃止、または指定されていない学校もある。学校によっては、廃止したものの、私服通学は却って経済的に負担になるという意見も出て、制服が復活したり、あるいは着用自由の標準服が採用されているところもある。
小学校は、私服通学としている学校の率が多いように思う。都市部の公立小学校でも、制服がない学校は普通に存在している。一方で制服がある公立校では、標準服を採用しているところも多く、最近ではネット通販などで安く調達する例もある。
専門学校(専修学校)のうち、看護や福祉を学ぶ医療系専門学校では制服が指定されているところが多く、女子制服は、たいていタイト系Aラインスカートのスーツか、パンツスーツである。
女子の短期大学や4年制大学で制服を指定しているところは多くはないが、現在では入学式や卒業式などの式典のみに着用義務を課しているところがほとんどのようだ。
<指定制服店>
新入生が着る制服は、学校が指定している制服店から購入することになる。制服店は地元の制服を扱っている専門店や、百貨店(デパート)、地域によっては個人経営の洋品店が取次ぎをしていたりもする。
学校によって、提携している制服店がひとつの場合もあれば、複数の場合もあり、複数が指定されている場合は生徒の希望によって自由に購入先を選ぶことができる。価格はほぼ横並びだが、ウール100%か、ウールとポリエステルの合繊かなどによって価格差が設けられていることもある。
制服が指定されている学校では、2~3月ごろに入学予定の学校から制服新調の案内がくる。最近の大学では、入試形態に、指定校推薦や総合型選抜(AO)、大学入学共通テスト(旧センター試験)、一般入試などのバリエーションがあり、合格発表の時期も様々であることから、その都度制服新調の案内を出して、別々の注文締め切り日を設定していることがある。
一般的には、入学予定の生徒は、指定された期間または指定された日時に、学校指定の制服店か、特別に設けられた会場に出向いて注文する。注文方法は、サイズ別に並んだ制服を試着して、さらに、必要があれば袖丈や着丈、スカート丈などを修正してもらう。これをフィッティングという。上着の着丈やスカート丈などシルエットに影響する調整は、学校の校則の範囲内で行われる。
当然、これら学校制服を新調できるのは新入生または在校生のみで、フィッティングの際に、新入生しか手に入れられない入学許可証や制服注文書など、在校生なら担任教師の許可証などを持参しなければならないという学校が増えている。
いわゆる昭和の時代(戦後)にはこのあたりのチェックはずいぶんと甘く、公立校であればほぼ100%、買おうと思えば誰でも買うことができた。私立校でもいろいろ聞かれる場合があるが、購入できる確率は今と比較にならないぐらい高いものであった。
制服店の中には、下取り制度を採用しているところもある。たとえば、中学校時代の制服を制服店に持ち込んで買い取ってもらい、その店で高校の制服を注文するのである。買い取ると言っても、一律千円かそこらだが、新入生の保護者らは高校制服の購入代金がいくらかでも安くなるのでありがたがるようだ。
制服店のアピールポイントは「中学校の使い古された制服を回収して原料リサイクルに供します」ということで、「資源の有効活用」を押し出しているのだが、客引きの宣伝文句でもあることは明らかである。買い取られた制服たちはほぼすべてがリユースではなく、裁断・粉砕処理されてリサイクルされる。
↓一例だが、青森市の百貨店「青森中三」では、青森市内の中学校制服を販売している。毎年2月ごろになると、全国各地の百貨店(デパート)では、チラシに学校名一覧が掲載されたりする。
「制服承りチラシ」などのキーワードでネット検索するとおもしろい。
店内の専用売り場も拡張して展開され、各校の制服がずらりと並ぶ。毎年、このような光景を楽しみにしている。
画像:青森中三
新入生の家庭では、新しい制服が届くと娘さんに早速試着させ、よく似合ってるね、可愛いねなどと明るい話題に包まれる。そんな雰囲気のなかで注目される制服も、嬉しいひと時を過ごす。
だが、制服がちやほやされる時期はすぐに終わる。女子生徒の日常着と化して、ぞんざいな扱いを受けるようになるのだ。そして3年間使い込まれた挙句、卒業したら一瞬だけ「この制服ともお別れだね」という中途半端な言葉を掛けられて、ゴミ袋に放り込まれる。
在学中、女子生徒に懸命に尽くしてきた制服は、ねぎらわれることなく処分されていく。
<リユース制服店>
たとえ公立校の標準的な制服であっても、一式揃えると経済的な負担はかなり大きなものになる。それを解消するために、卒業生などから回収した中古制服を再販する店舗が登場するようになった。いわゆるブルセラショップとは異なり、先輩が着用した制服を後輩に使ってもらおうという試みである。
どこの地域にもあるわけではないが、県や市の自治体単位で地元の制服を扱っていて、買取り価格も安いが再販価格も割安で設定していることが多い。これは主に各家庭の家計に優しい制服を提供する目的があるからである。補修が必要なものはきちんと修繕を施し、きれいなものを提供する。
学校生徒の着用目的なので、誰でも買えるというわけではなく、学校の入学許可証や生徒証などが必要である。
<校内リユースプログラム>
リユース制服店と同じコンセプトで、各学校の中で制服のリユースを図ろうという試みである。どこの学校にもあるというわけではないが、PTAなどの保護者会や卒業生の親睦会、校内の生徒会、教職員会などが主催していて、公立・私立を問わない。
システムとしては、卒業時に任意に制服を回収し、それを校内の特定の場所などに保管しておき、新入生や在校生で必要とする生徒に提供する。半ば強制的に回収する学校もあるそうだ。また、回収は無償で行われることが多く、無償または有償でもかなり格安な価格で提供される。有償にする理由としては、クリーニング代や補修代を賄うためである。有期でレンタルされる例もあるようだ。
私の母校でも回収された制服の保管部屋があったが、次の出番を待ちながらずらりと吊るされている制服の横で、「処分」と書かれた箱に押し込まれている汚れたブラウスやスカートたちを見るたびに胸が痛んだのを思い出す。
こうした販売会は学校によって定期的に開催されているところと、不定期のところがある。会場が学校内で開催されることがほとんどなので、入場に際して保護者カードのような身分証明証が必要になるだろう。
毎年行われる学園祭(文化祭)のバザーで、自校の制服が売りに出されることもある。学園祭会場に入ることができたなら、あとは家族を装って購入することは不可能ではないが、最近の学校、特に私立校の学園祭は招待制になっていることが多いので、まずはそのチケットを手に入れなければならない。
<ブルセラショップ>
ブルセラショップとは、女子中高生の中古制服や体操服などを販売する店のことを指す。ブルセラというのは、ブルマとセーラー服の混成語らしい。
こういう店舗形態が登場したのは1980年代後半ごろからのようだ。初めて店に入ったときは、まるで女子更衣室に忍び込んだかのような背徳感と興奮が一気に押し寄せてきて、ドキドキが止まらなかった。
このような店舗は中古制服を扱ってはいるが、先に紹介したリユース制服店とは目的を大きく異にする。顧客層は男性が中心で、主に性的興奮を得たり、性欲を解消するなどのアダルト目的である。なので、アダルトグッズ販売とみなされ、18歳未満の入店を禁じている。入店時に年齢チェックがあるわけではないが、明らかに18歳未満だと分かれば入店お断りとなる。
商品のバリエーションは幅広い。制服は学校別で一式揃いで販売されているものもあれば、不明校(学校名が分からないもの)と称して、一式そろっていても割安な価格で販売されているものもある。さらに、たとえばセーラー服の上衣だけとか、ブラウスだけとか、チェックスカートだけとか、半端もの扱いされて均一価格で投げ売りされているものもある。
マニアの間で人気のある有名校の制服は1セット数十万の価格が付くものもある一方で、不明校・無名校というだけで数百円で売り飛ばされるものもあって、何とも理不尽な世界だと思う。どちらの制服も、ふつうの女子中高生が袖を通して学校へ通っていたものなのだ。
憧れのお嬢様校のセーラー服一式を部屋の壁に飾り、それを愛でながら、投げ売りされていた似たようなセーラー服に擦り付けて自慰行為をするという制服フェチも少なくないだろう。
また、最初から汚損や破損する目的で大量に購入していくフェチもいて、このような店に並べられている制服や体操服たちは、購入客に運命を預けることになる。まぁ、卒業生に売り飛ばされた段階でゴミのように捨てられたのと同じだから、幸せを望むほうが間違いというわけか。
店には卒業生の女子自らが制服を抱えて売りに来ることがあるが、そのような場面に出くわすと、タイミングが良ければ、制服を着た女子と一緒に写真を撮ったりできたりする。制服にとっては、所有していた女子に着用してもらえる最後の機会となる。このあと、客に買われていった制服は男性のお相手をさせられる毎日を過ごさなければならない。同じ「毎日」でも、学校生活の「毎日」はもう戻らない。
一方、女子は、制服を何の未練もなく売り飛ばしたお金で、楽しく遊びに興じるのだろう。毎日世話になった制服のことなんて、もう思い出しもしない。制服を売ったお金も一晩でツユと消えてなくなる。
近年では、こうしたブルセラショップもネットサイトを構え、通販でも購入できるようになっている。これらの店は卒業生から直接買い取ることが多いせいか、夏服冬服すべてのアイテムが一式揃えで販売されていることも多く、価格は高めだが、 マニアにとっては重宝されているようだ。女子生徒一人に所有されていた制服アイテムたちが、バラバラにされることなく第二の人生を送ることができるという点では好ましいのかもしれないが、ひどい性的虐待を受けることになるのならば、悲惨としか言いようがない。
直接取引という意味でここに書くが、その昔、テレクラやツーショットダイヤルなどで知り合った女性に、在学時代に着ていた制服を売ってもらうという例もあったようだ。その流れは現在、ネットオークションやネットフリマに引き継がれているのだろうか。
ブルセラショップは、エッチ目的の男性客ばかりを相手にしているわけではない。
アダルトビデオやB級映画、インディーズビデオ、自主製作映画や舞台などの衣装として制服を購入していく客もいるという。また、女性客もいて、いわゆるコスプレ用として作られたペラペラなものを嫌って、本物の制服を安く求めるという。コスプレマニアとしてそのまま着たり、改造を加えたりするようだ。そうなると、再び女性に袖を通してもらえるわけで、男性に凌辱されるのを恐れていた制服にも一条の光が差すと言えよう。
<ネットオークション>
インターネットの普及により出現した新しい売買形態である。
オークションというのは、出品された商品に対し、購入希望者が価格を決めて、最終的に最も高い金額を付けた人が購入する権利を得るという形式だ。魚市場のセリなどに代表されるように、古くからおこなわれていた形式だが、インターネット上で個人が自由に参加できるようになってからは、各家庭で所有していたありとあらゆるものが出品されるようになった。
ヤフーがオークションサイトを運営するようになってから、その実績を着実に伸ばしていたのを見て、楽天オークションなどいろいろなサイトが立ち上がって、一時期活況を呈していた。だが、次第に経営が難しくなってきたようで淘汰が始まり、双璧として頑張ってきたヤフーと楽天のうち、楽天オークションも閉鎖となる。
現在、総合オークションサイトとしてほぼ一人勝ちなのはヤフーオークション(ヤフオク)である。
ネットオークションのメリットの一つとして、個人が所有し使用していた制服が出品されることがある点だ。卒業して不要となった制服は遅かれ早かれ、邪魔者扱いされて処分される運命だ。それをいくらかでもお金に変えようという気持ちから、オークションに出される。出品者は誰が何のために購入するのかなんて興味は無い。実際、調査したところでは、お買い上げいただくのなら目的は問わないという回答が多かった。手放される制服たちにしてみれば、なんともやりきれない思いだろう。
先に、ありとあらゆるものが出品されていると書いたが、厳密にはいろいろ規制がある。ヤフオクでは、その出品禁止品の中に中古制服が含まれているのだ。なので、個人出品者による中古制服の出品はことごとく削除される。そして、そのような出品を同じIDで繰り返していると、容赦なくID停止されたりするので注意が必要だ。
出品常連者もそのあたりは心得ていて、タイトルや商品説明などに工夫を凝らしている。以前は、制服を撮影した「画像」を販売していると称して「制服本体」を販売する、というゲリラ的な売り方をしていた出品者もいた。長らく、この方法で多数の中古制服が取引されていたのだが、悪質とも言える輩のせいで見かけなくなってしまった。
画像販売を看板に掲げて中古制服を売るという方法を逆手にとって、入札者側を制服本体の購入だと思いこませ、実際に画像を収録したCDを送り付けるという手口が発生したのだ。商品説明に「画像を入れたCDが商品です」と記載されていたので詐欺ではないが、やり方があくどい。
現在でも中古制服はヤフオクで販売されているが、そこには様々な工夫があることを知っておくべきであろう。単純なパターンは中古制服を「新品・未使用品」として出品する方法だ。AIサーチなどをすり抜ける裏技である。
中古制服が取引されるのには賛否両論あろうが、ゴミ焼却場送りとなる制服たちが、生きながらえる道のひとつとして確保されても良いのかもしれないと思い始めている。
総合オークションでの中古制服の売買が禁止されていることを受け、中古制服の専門オークションサイトが開設され、賑わいを見せている。その代表格は「制服市場」だ。日本最大の制服オークションと謳っている。出品者は扱う金額の多寡にかかわらず、全員が身元確認を行って登録しているので安心である。制服や体操服、そのほか学校に関するもの(カバン、生徒手帳、卒アルなど)と豊富な商品内容を誇る。今後、このような取引の場が増え、中古制服たちが健全に売買されるのであれば、ゴミとして無駄死にする制服も減るのでは無いだろうか。
中古制服を手にしたフェチの皆さまには、現役時代、女子生徒に着用されていたころの苦労を思いやっていただき、大切に扱っていただきたいものである。
<ネットフリマ>
ネットオークション登場から少し遅れて、ネットフリマという形式のサイトが現れた。
フリマというのはフリーマーケット(蚤の市)の略で、休日に公園などで開催される対面型のフリマは以前から存在していた。それをネット上で展開したのが、メルカリやラクマに代表されるネットフリマサイトである。最近では、フリマサイトと言えばこれらを指す。
ラクマはフリルというサイトを前身とし、楽天オークションが閉鎖になった頃にラクマとなって現在に至る。フリマサイトは他にもいろいろ存在するようだが、出品点数や内容の豊富さの点ではメルカリがダントツだと思う。だが、後述するが、中古制服はほぼ見かけない。
ネットフリマもネットオークションも、ネット経由で物を買うという点は同じだ。個人間取引が主流で、中古品がメインとなるのも共通している。大きな違いは価格の決め方で、ネットフリマは予め固定した金額が提示されている。少なくとも、提示価格より値上がりすることは無く、さらに、出品者とのやり取りで値下げしてもらうこともできる。提示価格のままいきなり購入することもできるが、多くは質問欄から価格交渉を行い、話がまとまれば購入ボタンをクリックするという流れが一般的だ。
中古制服に関しては、ネットフリマも、ヤフオクなどと同様に出品を禁止している。特にメルカリではかなり厳密に監視しているようで、中古制服はことごとく削除されている。一方で、ラクマは、楽天オークションの流れがあるのか、この点ではやや甘いようだ。フリマサイトで探すならラクマを見よう。
ネットフリマは、個人の家庭からの出品が多いので、中古制服も卒業生やその保護者からの出品がよく見られる。そうした中古制服はマニアの心をくすぐっているようだ。質問欄でもプライベートにかなり突っ込んだことを聞いている例があるが、あまり度が過ぎるとアク禁(アクセス禁止)にされてしまうので要注意だ。
<譲渡>
リユースという点で考えると、幼稚園や小学校の制服は、姉から妹へおさがりで受け継がることが多い。このあたりの年齢は子どもの成長が早く、すぐにサイズアウトしてしまう。成長を見込んで大きめサイズを着せるが、小学校だと入学後3年生までが限界で、4年生で買い替えて6年生までというパターンが一般的だろう。姉がいなければ親戚や友人のおさがりをもらって着せることになる。
PTAの譲渡会などに出されれば、たとえテカテカになろうと形があるうちはこき使われたりする。10年以上使いまわされている制服など普通に存在していて、ネームタグに何人もの名前が手書きされた跡があるのを見ると、ご苦労さんと言いたくなる。
その昔は、全体が黒ずみ、全身テカリだらけで、あちこち補修されてクタクタになったセーラー服などもよく見られたものだが、最近は補修しまくってまで着ようとすることは無いらしく、レトロ制服でもない限り、補修だらけでぐったりした制服は見なくなったが、そんな汚らしい制服が妙に懐かしい。
中高生では、卒業していく先輩の制服や、同級生のカノジョの制服を記念にもらい受けるというパターンがある。女子が女子の制服をもらう場合は、単純にリユース目的の場合と、恋心から譲り受ける場合があるだろう。最近はLGBTSの言葉が示すように性的嗜好も多様化しているので、女子が女子に恋愛感情を抱くことも珍しくない。
一方で、男子が女子の制服をもらう受けるのは、なかなか勇気がいることだと思う。女子が女子の制服をもらうのとは違って、男子の場合はそこにエロチシズムや変態臭が漂うからだろうか。在学中にそれなりに付き合いがあるともらいやすくなるだろうが、そうでない場合は変態扱いされかねないので要注意だ。
もっとも、思慕の念を抱いている女子から何か記念の品をもらおうとするならば、普通の男子生徒ならば、せいぜいブレザーのボタンやセーラー服のスカーフを頂戴するというのが順当な線だろう。着衣に関係しないものならば、授業で使ったノートや教科書というのも思い出深いものだ。それなのに、あえて制服一式を要求するとなると、制服自体にかなり関心がある男子だとみなされ、「制服なんて何に使うの?」という問いにきちんと答えられるだけの材料を用意しておかなければなければ、いやらしいヤツという印象を持たれたまま卒業することになる。といなると、将来、同窓会にも出席しにくくなるかもしれない。
<拾得>
毎年卒業式が行われる3月から4月にかけて、ゴミ集積所に学校制服が捨てられていることが多くなる。3年間(中高一貫校はそれ以上)学校生活を支えてくれた制服や、喜怒哀楽を共にした制服や、汗や涙をしみこませた制服たちが何の未練もなく捨てられている。
なかには卒業式から帰った日の夜や翌日に、さっそく燃えるゴミに出されているものもある。悪用されないようにボタンはすべて剥ぎ取られ、ネームは切り抜かれ、ひどいときは真っ二つに切り裂かれてゴミ袋に押し込まれる。さらに、生ゴミなどと混ぜられ、とどめにソースまみれにされて捨てられるという例も少なくない。全く感謝の欠けらもなく、情け容赦ない仕打ちだ。
逆に、まったく無防備に捨てられているものもある。ネーム刺繍はそのままだし、手書きされたフルネームも消されていない。クローゼットに掛けられていたものをそのまま出したのか、ハンガーごと丸められているものすらある。クリーニング店のカバーが付いたものなどもあって、いちいち確認したり、分別したりすることすら面倒なのかと呆れてしまう。制服たちが邪魔者扱いされているように思えて切なくなる。
誰の仕業(しわざ)か、ゴミ袋が破られて制服が引きずり出されている場面に出くわすことがある。そんな制服たちと目があうと、まるで助けを求めているかのように見える。このあと間もなくゴミ収集車が来て、処刑場に連れていかれるのかと思うといてもたってもいられなくなるが、泣く泣くその場を離れる。
袋から引きずり出された制服が、見せしめのようにわざと広げられていることもあるが、もっとひどいと思うのは、その上に、生ゴミ入りの袋が次々に載せられていることだ。まだまだ使えそうな奇麗なブレザーやセーラー服やプリーツスカートやブラウスやコートや体操服たちでもまったくお構いなしである。普通に人にはゴミとしか見えないことに憤りを覚えてしまう。
昨今は、衣類は燃えるゴミではなく、衣類資源として別に回収している自治体もあるが、それなのに、制服や体操服は回収できませんというところも多いようだ。かくして、中古制服はゴミ焼却場送りとなるしか道は無い。
だからといって、捨ててあるものをもらって来てはいけない。ほかのページでも書いているが、ゴミ集積所に捨ててあるものを拾ってくると、刑法254条の「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する」という規定により、遺失物等横領罪(占有離脱物横領罪)に問われることがあるそうだ。
ゴミ集積所で大きな袋に押し込まれた制服たちを見ても手を出せず、見殺しにするしかない。セーラー服の白線やスカートのタータンチェック柄、ブラウスの白い丸襟、コートのツヤツヤ裏地など、袋ごしに明らかに制服だと分かるものを見捨てるのは、いつも胸が張り裂ける思いがする。
入手方法とは関係がない話になってしまったが、かく言う私も、もう時効ということで告白すると、ずいぶん昔には制服類をいくつか救出したことがあった。屋根付きの家の中に再び保護してもらえてホッとしているように見えて、私も嬉しかったことを覚えている。
学校制服は卒業してしまえばその家庭では不要品となるが、すぐに捨ててしまうのは残酷である。なんとか第二の人生を与えてもらいたいものだ。
・レンタル
学校制服をレンタルするというのは一般的ではないが、存在している。たとえば、大手制服メーカーのカンコーは、NANCHAという制服レンタルシステムを提供している。これは特定の学校の指定制服ではなく、汎用のブレザー制服などを貸し出すものだ。
カンコーNANCHA
https://kanko-gakuseifuku.co.jp/shoplist/harajyuku/nancha
撮影用・イベント用でレンタル制服を提供している店ならば数は多い。その一例をあげる。
FALECO
https://www.faleco.co.jp/shop/sc-uni.php
ダーリング
https://www.darling.co.jp/item-category/sailorsuit
ぎゃくし
https://www.gyakushi.co.jp/seifuku-r/
特定の学校制服をレンタルするルートは、一般向けには存在しない。新入生や在校生が、何らかの理由、たとえば、着ていた制服が大きく汚損・破損したとか、紛失・盗難に遭ったとかいうことで、短期で必要とする場合、学校やPTAなどで保管しているリユース品か予備品を貸してもらうということはあるようだ。そのようなシステムがない場合は、同級生から予備を拝借するか、卒業生から借りるなどの手配をすることになろう。
<その他>
学校制服は、女性衣類の中でも特に執着する男性が多いせいか、盗難の被害に遭いやすい。学校の女子更衣室や部室から制服や体操服がごっそり盗まれたという事件は、時々ニュースを騒がせている。テレビ画面に映される、盗難品としてずらりと並べられた制服や体操服たちを見ると、可哀想で涙が出そうになる。犯人にいったいどんなことをされていたのだろうか。
そこまで大掛かりでなくとも、誰もいない教室から、椅子の背もたれに掛けられていたブレザーが盗まれるというようなこともある。自分がやったわけでもないのに、ホームルームの時間に担任教師からそんな話を聞くとドキドキそわそわしてしまう。
最近は、学校内への立ち入りも厳重になり、あちこちに防犯カメラも取り付けられていて対策が強化されているので、以前よりは被害に遭う確率は低くなっただろうか。
「盗む」という行為は入手方法としては最低である。
盗まれた女子は自分の物がなくなったショックに加え、教室にいる誰かが盗んだかもしれないと疑心暗鬼になる。嫌がらせなのか、ストーカーなのか、異常性愛なのかと考えを巡らせる。うちに帰ると親にこっぴどく叱られる。管理が悪いからだとか、どこかに置き忘れたのだろうとか、ボーッとしていたからだとか、物を大事にしないとか、まるで自分の責任であるかのように責められる。高い物だからと当分は小遣い抜きにされる子もいる。
そもそも在校中に盗まれて、体操服で帰宅しなければならないときの惨めさったらない。
盗まれた制服のほうも被害者だ。いきなり拉致されて、さまざまな性的虐待を受ける。切り刻まれて捨てられるものもあれば、体液まみれにされて、毎日弄ばれるものもあるだろう。そしてたいていの場合、もう二度と元の所有者のところには帰れない。その恐怖と絶望は計り知れないのだ。
万一、犯人が捕まって、制服が戻ってきたとしても、元の所有者は気持ち悪がって、再び着ようとはしないだろう。制服はまた会えたとホッとしているのに、受け取りは拒否されて処分されてしまうのだ。こんな惨めな話は無いだろう。入学直後に盗まれでもしたら、あまりにも短命だ。
違法な行為で入手することだけは絶対にやめてもらいたい。
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最終更新日:2024年11月12日
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