学校制服スカートの裏地

あなたの母校の中学校や高校の制服スカートに、裏地は付いていただろうか?

そう聞かれて即答できる人は、かなりのスカートマニアか、裏地フェチであろう。あなたが女子でないなら、スカート捲りでもしない限り、制服スカートの中を見ることはほとんどなかったはずだから無理もない。

もっとも、当事者の女子であっても、あれどうだったかな?となる。ことほど左様に裏地というのは目立たない存在だ。薄暗い中で裏地は過酷な環境をひたすら耐えているというのに、誰にも顧みられない可哀想な存在なのだ。

 

最近増えてきたとはいえ、日本の学校制服スカートに裏地が付いている割合は、まだかなり少ない。私服のスカートにはたいてい裏地があるのに、制服のスカートに付いていないのは何故だろうか。


↓スカートに裏地が付いてるかどうかは、外から窺い知ることはできない。最近では公立中学校レベルでも裏地付きのスカートが採用される例があるが、それもこの学校がという特定はできず、メーカーによる。

大阪花乃井中学校
大阪花乃井中学校

↓最近主流になっているブレザー&チェックスカートでは、スカートに裏地が付いている例が多くなったが、これもメーカーやブランド次第だ。。

奈良八木中学校
奈良八木中学校


私が小学生だったころ、女子の制服スカートをよく捲りあげては叱られたものだ。今ではありえないだろうが、「私はスカート捲りをしました」と書いた紙を背中に張り付けられて、校内を歩かされたりもした。そんなスカート捲り常習犯でも、スカートに裏地がないことを何とも思っていなかった。それどころか、上着のつるつる裏地にはあれだけ執着していたのに、制服スカートの裏地の有無なんて考えもしなかったのである。

小学生吊りスカート
小学生吊りスカート

↑現在でも小学生の制服スカートの裏地装着率は極端に低い。

女児は私服でも裏地付きのスカートを穿く機会があまりないので、裏地が付いていると逆に不快に感じる子もいるようだ。

博多市立某中学校
博多市立某中学校

↑ほとんどのジャンスカは、上身頃に裏地が有ってもスカート部分には付いていない。


中学生になって、セーラー服の24本ヒダスカートを眺めているうちに、私服のスカートに普通に付いている裏地が、制服スカートには無いのは何故だろうと思うようになる。

高校で同級生の制服ジャンパースカート(ジャンスカ)に出会うと、ジャンスカの上身頃(上半身部分)には裏地があるのに、スカート部に無いことを知り、「制服スカートには裏地が無い」という事実に正面から向き合うこととなる。 

ジャンパースカート 表側
ジャンパースカート 表側

↑ジャンスカで、スカート部分にまで裏地が付いている制服は見つけるほうが難しい。

一般的にはウエストから上の部分にのみ裏地が付いている。

ジャンパースカート 裏側
ジャンパースカート 裏側

↑すっかり裏返しにすると一目瞭然で、スカートの生地は裏地がないため、生地の裏側がむき出しになって女子生徒の脚に覆い被さる。



私服スカートで裏地がないものを穿く場合、ペチコートを内側に穿くことがある。ペチコートは裏地生地でできたスカート状のものだが、学校制服ではほとんど用いられない。

以前は、シュミーズ(スリップ)、スクールインナー(下着)などを着ることが多く、ペチコートと呼ばれていたものもあるが、下着状のものだった。

ちなみに現代では見せパン、ハーパン、オーバーパンツなどを穿いていて、スカート状のものは身に着けないようだ。


裏地の役割

制服スカートに裏地がないことの理由を考える前に、裏地について基本的なことから述べてみたい。

裏地というのは表地の裏側に張られている生地のことで、艶やかな光沢とすべすべした肌触りがあるものが多く用いられる。

 

裏地の主な役割をまとめてみよう。

・滑りをよくし、着脱を容易にする。

・吸湿性や放湿性のある生地を使うことで、汗などによる表地への影響を抑える。

・静電気を防ぐ。

・表地をバックアップし、全体の型崩れを防ぐ。

・内側からの摩擦による表地のダメージを抑える。

・滑りをよくすることで、動作性を確保する。

・表側からの透けを防ぐ。

・脱いだときやスリットが捲れたときなどのおしゃれ度をアップする。

 

裏地は外からは見えないが、まさに縁の下の力持ちとして重要な役割を果たしている。なのに、制服スカートは学校生活のなかで集中的に酷使されるにもかかわらず、裏地が付いているものは稀なのだ。


北海道の高校

制服スカートには裏地がないのが当たり前という環境で育った私が、のちに学校制服で初めて裏地付きのスカートを入手したのは、たしか「とわの森三愛高校」のものだったと思う。同校は北海道にある学校だが、北海道は極寒なので、保温目的で裏地が付いているのかなと単純に想像したものだ。

学校制服スカートに付けられている裏地は、私服スカートとは違って、相当使い込まれた跡があった。座りジワの見本のように、いやそれ以上に細かなストライプ状の水平シワが無数に入り、芸術的にも見えた。さらに垂直方向にもシワがあって、女子生徒のケツ圧のすごさに恐れ入ったものだ。

北海道とわの森三愛高校
北海道とわの森三愛高校
北海道とわの森三愛高校スカート裏地
北海道とわの森三愛高校スカート裏地


なぜ制服スカートには裏地が付いていないのか

ネット上で取引されている中古制服たちを見ればわかると思うが、ほとんどの小学校/中学校/高等学校の制服スカートには裏地は付いていない。私服のスカートにはかなりの割合で裏地が付いているのに、なぜ学校制服スカートには裏地が無いのだろうか。

 

<生地素材>

・裏地の必要性

まず、制服の生地素材を考えてみよう。

昭和の時代から、学校制服の表地に採用されてきた生地はウールだった。

ウールは天然素材なので、通気性に優れており、蒸れないように体を包む性質がある。となると、裏地で通気性をバックアップする必要がない。

また、わずかではあるが、ウールには伸縮性もあり、激しい動作にも柔軟に対応できる。さらにプリーツを多めに設定すると、動きやすさは格段に向上する。最もよく見る24本ヒダのスカートだと、やや重くはなるが、動作性は十分だろう。昨今はスカート丈が短い傾向にあるし。

そのため、滑りを加味して動作性能を向上させる裏地の必要性は無くなるわけだ。

 

もともとウール100%、つまり純毛で仕立てられていた制服だが、家庭への洗濯機の普及とともに、自宅で洗いたいという要望が多くなると、生地にも改善が加わる。そこでポリエステルとの混紡でできた制服が登場するわけだ。この場合も、天然素材としてのウールのメリットと、滑りの良さや洗濯のしやすさを備えたポリエステルのメリットにより、スカートに裏地の必要性は感じない。

 

昨今ではポリエステル100%の制服(冬服)もあるが、そもそもポリエステルじたいが格段に進化していて、丈夫で、通気性に優れ、蒸れない性質というウール顔負けのクオリティになっているのだ。なので、ポリエステル100%の冬服スカートにも裏地は要らないということになる。

 

そのほかの理由もいくつか挙げてみよう。

<重量>

・裏地を付けると、全体の重量が増す。裏地は薄い生地で自重は知れているとはいえ、スカート全体に張るとなるとそれなりに重くなる。そもそも24本やら28本やらのプリーツ数のスカートは、それだけで結構な重さだ。それがジャンパースカートともなると、肩にずっしりと重さを感じる拘束衣となる。ジャンスカでスカート部だけ裏地がない理由もここにあるだろう。

 

<価格>

・裏地を付けると価格が上がる。裏地に使われる生地は、ポリエステルのほか、レーヨン、キュプラ、アセテート、ナイロン、シルクなどがあるが、普及タイプのポリエステルでもけっこう高価なものだ。さらに裏地を付けるという、縫製の手間賃も発生する。

制服の価格が高いと騒ぐ保護者たちを納得させるためには、トータル価格を少しでも下げる必要がある。

 

<べたつき>

・裏地を付けると、汗でべとつくことがある。上で述べた裏地のメリットに相反するかもしれないが、裏地のせいで太ももの汗がべとつき、不快感を感じることがある。学校生徒はパンストなど履かないで、いわゆる生脚でスカートを穿くのでなおさらである。このため、せっかく付いている裏地を切り取ってしまう生徒もいるようだ。

これを解消するためには、クオリティの高い裏地を採用しなければならないが、そうすると価格が跳ね上がってしまう。

 

<動作制限>

・裏地の付け方によっては動作に大きく制限が掛かり、たとえば自転車をこぐ場合に邪魔になる。せっかく24本ヒダなどのプリーツスカートを採用しているのに、裏地がストレートタイプだったりすると股を広げにくい。とはいえ、裏地をたっぷり取ると重量も増すし、当然、価格にも反映する。また、フレアタイプの裏地だと車輪への巻き込みなどの危険もある。

ところで、大学で制服が採用されているところがあるが、そのほとんどすべてのスカートには裏地が付いている。これは、その形状がタイトまたはAラインであり、太ももに密着させて穿く構造から、ずり上がり防止が主な理由だと思われる。

大学生はもう大人なので、活発に走り回るのは就職活動のときぐらいだろうし、夏の暑いときに教室でスカートをうちわ代わりに使うこともないだろうから、スカートに24本ヒダは必要ない(笑)。なので、下肢に沿うようなシルエットのスカートが採用されているのだ。

聖心女子大学スカート裏地
聖心女子大学スカート裏地

↑入学後わずか1か月間だけの着用でも、タイト系の裏地には座りジワができてしまう。

関西女子短大スカート裏地
関西女子短大スカート裏地

↑常時着用義務があったころの制服スカートの裏地は、ケツ圧によってボロボロになる。使用頻度が極端に多いので仕方のないことだが、その疲労ぶりは見ていて痛々しい。



裏地付きの制服スカート

基本的に小学校/中学校/高等学校の制服スカートには裏地は付いていないものだったが、昨今では、有名ブランド制服が採用されるようになったおかげもあってか、地方都市の公立中学校の制服でさえも裏地付きのスカートを見るようになった。

がしかし、裏地のある制服スカートの割合は、全体から見るとまだ少数派だ。

淀之水高校スカート裏地(冬服)
淀之水高校スカート裏地(冬服)

↑激しい動きをする女子高生の制服スカートに裏地を付けると、その傷み具合は半端なものではない。

淀之水高校スカート裏地(夏服)
淀之水高校スカート裏地(夏服)

↑卒業するころには尻に敷かれていた部分は縮み上がって蛇腹状態になる。芸術品とも言える状態だ。


 

 

では、ここでは、制服スカートに裏地を付けるようになった理由を考えてみよう。

 

・歴史的な流れで考えると、昔(昭和中期~後期)の中高生は、制服の下にシュミーズ(スリップ)を着るのが一般的だったから、裏地が無くても困ることは無かったはずだ。現在では、見せパンやオーバーパンツなどを穿くようになり、滑りが要求されるようになったのだろう。

 

・私服においても、高級で上質な裏地付きのスカートを穿き慣れている子供たちが、制服スカートにも肌触りの良い、スベスベの裏地を求めるのは自然な流れであると言える。

 

・昔の制服スカートの色柄は濃紺または黒色一色で、単体でも透けることはほとんどなかったが、近年はチェック柄など色合いも明るくなり、特に夏服の薄手の生地のスカートでは単体だと透けることがある。それを防止するために裏地が必要となってくる。

 

・スカートの形状も、変形Aラインやタック入りのボックスプリーツなど奇抜なものが登場し、ずり上がり防止のために裏地が必要となる。

 

以上のような理由で、生徒自身や保護者からの要望が多くなったと思われる。

 

裏地が付くと当然制服の購入価格も上がる。日本は高度経済成長によって、一般家庭の所得も上がり、高価な制服を購入する余裕も出てきたので、その点は問題なく受け入れられてきたという背景もあろう。

だが、近年は経済も停滞し、格差社会の中で、各家庭の貧富の差が顕著になりつつある。少子化の影響をもろに受けて、私立学校は経営維持のために生徒集めに必死で、その一助として女子制服デザインにも工夫を凝らす。その結果、有名デザイナーによるブランド制服を採用する。お金持ちはそうした学校へ通い、お嬢様は高価な制服に身を包む。

一方、公立学校を中心に、普及価格体の制服または標準服などを採用する学校もあって、経済的に余裕がない家庭はそちらへ通えばよい。一部の進学校などは制服そのものを廃止してしまっているところもあるが、実は私服通学というのがもっとも貧富の差を見せつけるので、そのことに気付いた学校は、基準服(標準服)というのを新たに採用している。

 

このように書くと、私立のお嬢様校のブランド制服にはスカートに裏地が付いていて、そうでない公立の廉価な制服スカートには裏地が無いように思えるが、実際はそうでもない。

地方の公立校でも、きちんと裏地が付いたものが存在するのである。これはおそらく、どこかの工程でコストカットを図った賜物であろう。

希望するすべての女子が、裏地付きの制服スカートを穿けるのなら素晴らしいことである。

 

さて、裏地万歳のように書いてきたが、制服スカートの裏地の評価は、生徒によって大きく異なるようである。たいていの場合、自分の制服スカートに裏地があったかどうかなんて、卒業してしまえば覚えていない。それほど空気のような存在なのだが、なかには、裏地なんて邪魔だと言って切り取ってしまう生徒も少なくないようなのだ。聞くと、べたつくとかまとわりつくとかいう理由で、着心地が悪いらしい。そんなものはおそらく安物の生地が使われていたと思われる。制服では採用されていないだろうが、1着何万円もする高級ブランドのスカートなどは、スカートを穿いているのを忘れるぐらい快適で、その立役者こそ裏地なのだ。裏地のせいで着心地が台無しになるというのは本末転倒である。

そもそも女子生徒はパンストなど履かないで生足でスカートを穿くので、裏地のべトツキはあるていど避けられない。

 

<裏地の素材>

ところで、制服スカートの裏地の素材や付き方はほぼ共通している。

素材は、制服の裏地として一般的に使われるポリエステルのつるつるした生地が多いが、同じポリエステルでもマットなつやの無い生地が使われていることもある。べたつきを解消するためだろうか、いささかのざらつきがある生地やメッシュ系の生地もある。

 

<裏地の付き方>

裏地の付き方は、プリーツスカートでは前後フラットな形状で合わせてあり、左右の裾にスリットを入れて、足さばきをよくしているものが多い。

稀に採用されているフレアスカートの場合は、裏地も表地の添わせるようにフレア形状に付いていることが多いようである。

 

埼玉県立某高校
埼玉県立某高校

↑学校制服でプリーツのないフレアスカートを採用しているところは珍しい。なぜか地方の公立進学校に多く、しかも女子校で採用率が高いようだ。

外観がフェミニンに見えるせいか、フレアスカート制服のファンは多く、さらに裏地付きとなると中古市場でも人気がある。

埼玉県立某高校 冬服
埼玉県立某高校 冬服

↑フレアスカートの裏地の付き方には数種類あるが、表地と同じ形状でフレアに付いているものが、個人的には好ましい。



酷使される裏地

制服は在学中に毎日のように集中して着続けられる。スカートも3年間(中高一貫校はそれ以上)穿きつぶされると、裏地はひとたまりもない。座りジワどころか、シワシワに縮み上がってしまうか、擦り切れてケバケバになるか、引っ張りテンションによって縫い目が裂けるかして、まともな姿をとどめていないことも多いようだ。

経済的に余裕がある過程は、洗い替えと称して複数枚のスカートを用意するが、そうでない場合や、お下がりで何人もの生徒に10年近く使われると、裏地も元の原形を留めていない。 

 

淀之水高校(冬服)
淀之水高校(冬服)

↑少なくとも3年間酷使されたスカートも外見は普通に見える。プリーツスカートはテカリがひどくても、プリーツさえきちんと手入れしていれば、きれいに見えてしまう。

しかし、裏を返せば悲惨な状態だ。

淀之水高校(冬スカート)裏地
淀之水高校(冬スカート)裏地

↑座りジワでバネのように縮み上がった裏地は、普通に洗濯したぐらいでは元に戻らない。プリーツスカートはアイロンをかけるのも面倒で、裏地までいちいちメンテしないのだろう。

最近のプリーツスカートは形状記憶なので、アイロン要らずになっているのも、裏地にとって不幸である。家庭でじゃぶじゃぶ洗って、そのまま干して終わりだ。



フェチにとっての意義

制服フェチのうち裏地に特に執着のある者にとって、裏地付き制服スカートというアイテムはことさら珍重される傾向にある。それが中古衣類好きならば、女子生徒の酷使によって裏地に座りジワが多ければ多いほど興奮するし、縮み上がっていたり毛羽立っていたりすると、眺めているだけでイってしまうかもしれない。女子生徒の尻や太ももに何時間も擦られ、汗や皮脂がべったりと付着した証(あかし)だと想像するだけで萌えるのだ。

そんな理由もあって、裏地付き制服スカートはネトオクでも人気があるようだ。 

淀之水高校(夏服)
淀之水高校(夏服)

↑夏服は冬服よりトータルの着用期間が短いが、汗や皮脂などの汚れが付きやすいという点で、冬服よりもタフな環境で使われる。

淀之水高校(夏スカート)裏地
淀之水高校(夏スカート)裏地

↑夏冬に関係なく、学校制服スカートはボロボロに着潰される運命だ。女子生徒は自分のスカートに裏地が有るなんてことは気にせず、か弱い生地を苛め続ける。クタクタになって邪魔だと感じたら、切り取ってしまえばいいだけだから。



制服ワンピースで、裾まで裏地が付いている例は珍しい。しかも写真の制服は小学校のものだ。かなりレアだと言えるだろう。

埼玉開智小学校
埼玉開智小学校
埼玉開智小学校
埼玉開智小学校

画像:制服市場PUNCH 70